【 減少する先発完投型投手 】プロ野球界から消えるのか? 年々減少する先発投手の完投数

簡単な自己紹介

JUNJUN
16年目の医療系国家資格取得者で野球を中心に活動し、現在は『法律』も勉強中です。
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近年のプロ野球界では投手の分業制が進んで役割が細分化されています。
今回は減り続けている完投数にスポットを当てて現状について話を進めていきます。

 

2011年以降のリーグ別完投数

 

まずは2011年以降のリーグ別の完投数の推移をグラフ化しました。
見ての通り、2017年に少し変動がありますが、基本的には右肩下がりに。
これを見るだけでNPB全体で完投数が減ってきていることがわかります。

図1 2011年以降のリーグ別完投数

 

① セ・リーグの球団別完投数

 

次にセ・リーグの球団別の完投数の推移をグラフ化しました。
セ・リーグ全体で見た場合、緩めではありますが右肩下がりの傾向のようです。

2018年は巨人が顕著に突出していますが、2019年には一気に減少しました。
ただ、カープとDeNAは2019年に関しては前年比で増加しています。

図2 2011年以降のセ・リーグチーム別完投数

 

② パ・リーグの球団別完投数

 

次にパ・リーグの球団別の完投数の推移をグラフ化しました。
パ・リーグで見た場合、セ・リーグに比べて右肩下がりが顕著

特に2011年から2013年にかけて大幅に減少しているのがわかります。
ソフトバンク、日本ハム、ロッテの3球団が大きく減少してきています。

2019年なると6球団が収束する特徴が見られ平均化が起きています。
唯一、日本ハムはオープナーの影響もありほとんど完投していません。

図3 2011年以降のパ・リーグチーム別完投数

 

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③ 現役で最も完投数の多いのは「涌井秀章投手」

 

現役選手で完投数の多い順にピックアップしてグラフ化しました。

  • 2019年も先発投手 ➡ オレンジ
  • 先発を外れた投手 ➡ ブルー
  • 引退選手 ➡ ブルーポイント

通算で見ると、涌井秀章投手が長く先発で活躍しているだけあり群を抜いています
次いで、金子弌大(千尋)投手、和田毅投手、岸孝之投手とベテランが続きます。
和田毅投手はMLB在籍5年間があるので日本に残っていればもっと伸びたはずです。

中堅投手では菅野智之投手と則本昂大投手がトップクラスに位置
この2人に関しては故障の回復次第でまだまだ完投数を伸びていくでしょうね。

図4 現役選手の通算完投数

 

③ 現役で最も完投数の多いのは「涌井秀章投手」

 

続いて、上記の先発投手(オレンジ)の投手を年推移でグラフ化しました。
先ほどトップに位置した涌井秀章投手も2011年以降は一気に減少しています。

理由としては西武時代の2012~13年にリリーフに回ったことによる影響です。
ただ、ロッテ移籍後も2015年には5完投しましたが、それ以外はほぼありません。

図5 現役選手の年間完投数の推移

 

菅野智之投手は入団以来、順調に数を伸ばしてきましたが2019年は失速
12球団で唯一完投タイプの投手でしたが、長引く故障により低迷しました。
腰部痛の状況にもよりますが、再び”先発完投型”として復帰を期待しています。

また、山口俊投手も2018年は12球団で2位と奮闘しましたが2019年は0に。
2018年までは高橋由伸監督でしたが、2019年に原辰徳監督に変わりました。
2019年は過去最高の成績を残してますが、采配の関係もあったのかも知れません。

2019年に完投数を一気に伸ばしたのが大瀬良大地投手。
個人成績はさほど良くなかったのですが、両リーグトップの6完投と奮闘
ただ、多くを前半戦に記録しており、後半戦の大事な時期に失速しています。

 

完投数と言えば「沢村賞」

 

完投数が関与するタイトルと言えば「沢村賞」。
沢村賞の受賞には以下の7つの基準が設けられています。

  • 登板試合数  25試合以上
  • 完投試合数  10試合以上
  • 勝利数    15勝以上
  • 勝率     6割以上
  • 投球回数   200回以上
  • 防御率    2.50以下

 

ただし、受賞において全ての基準を満たす必要はありません。
このうちいくつ達成したか、どれを達成したかで判断されます。
ある意味、“アバウト”とも言える判断ですが、ルール上仕方ありません。

改めて、完投数の基準を見ると「10完投」とかなりハードルが高い。
近代野球でこの数字を達成するのはかなり至難の業とも言えます。

以下の2011年以降の沢村賞投手の完投数を見るとそれが良くわかります。
10完投したのは、2011年の田中将大投手と2018年の菅野智之投手の2人。
それ以外のほとんどが6完投以下で10完投がいかに難しいかがわかります

図6 沢村賞受賞投手の完投数

 

ちなみに、2011年以降に10完投を達成した投手は以下の通りです。
9年間で4人しか達成していないをの見るとかなり高いハードルはです。

ちなみに2013年に金子千尋投手が10完投しましたが沢村賞は受賞していません。
田中将大投手が24勝0敗の脅威的な成績を残したことで受賞を逃しています。

[ シーズン10完投達成者 ]

シーズン10完投達成者 (回数)
2011年 田中将大 (14回)・ダルビッシュ有 (10回)
2013年 金子千尋 (10回)
2018年 菅野智之 (10回)

 

① 2019年は19年ぶりに沢村賞の「該当者なし」

 

現在の沢村賞選考委員は以下の5人となっています。
基本的に通算200勝以上の「名球会」投手から人選されています。

[ 沢村賞選考委員 ]

 

「該当者なし」について堀内恒夫氏は以下のように述べています。

野球のシステムが変わってきて、非常に完投しにくくなっている。ですからクオリティー・スタート(QS)という項目を参考に入れている。でもこれを(選考基準に)入れるほどレベルを下げていって、完投なしでもいいとなると、沢村さんの名前に傷をつけてしまうような気がする。 

~堀内恒夫氏 https://www.nikkansports.com/baseball/news/201910210000614.html

 

果たして本当にレベルが下がったと言えるでしょうか。
個人的には野球全体のレベルが上がり完投が難しくなってきたと考えています。

少なくとも、この10年で打者のレベルは格段に向上してきているように思います。
それに対応するためには、「球速」と「変化球」の種類が必要となりました。

昭和の時代のように「2球種で勝負」といった投手では通用しなくなりました。
どのように考察するかは様々ですが、少し疑問の残るコメントだったように思います。

また、平松政次氏も以下のようにコメントしています。

この2人(山口俊投手・有原航平投手)の成績を見ると甲乙つけがたい。どちらかを落とせない。しかし、ダブルで2人が受賞するには成績が物足りない。そういう選考の苦労があった。 

~平松政次氏 https://www.nikkansports.com/baseball/news/201910210000614.html

 

いずれにしても、選考基準を達成する投手が少なくなったのは事実。
今の時代の野球に沿った基準へと変化していくことが必要だと思われます。

また、選考委員が全て60歳以上と年代の編成も見直しても良いかも知れません。
例えば、山本昌氏や佐々木主浩氏などの若い年代も加えていても良いですね。

根本的に言えば、メンバーが名球会入り投手である必要も無いかも知れません。
選考委員の2名は沢村賞受賞歴がありませんし、こだわる必要もないでしょう。

とはいえ、完投がほとんど無い投手が沢村賞受賞というのは味気無いですね。
完投数を撤廃という形ではなく、基準を少し引き下げるなどの対応も検討されます。

 

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② 完投数に対する疑問は声は「海外」からも

 

ソフトバンクに在籍したCJ.二コースキー氏はTwitterで以下のようにコメントしています。
Tweetの最後には「10完投?!?!」と完投数の基準の多さに驚いた反応を見せていました。

25試合、15勝、10完投、勝率.600、200イニング、防御率2.50、150奪三振がいずれの投手でも標準的な基準が満たされなかったため、今年のNPBでは沢村賞を誰も受賞しませんでした。これらすべての条件を満たす最後のMLB投手は、1999年のランディ・ジョンソンです。10完投?!?!

No Sawamura Award winner in NPB this year (Japan’s version of the Cy Young) because the standard criteria wasn’t met by any pitcher: 25GS, 15W, 10CG, .600WP, 200IP, 2.50ERA, 150K. The last MLB pitcher to do all of these things was Randy Johnson in 1999. 10 CG?!?!

— CJ Nitkowski (@CJNitkowski)

※ 現在は削除されています

 

MLB最後の「10完投」はジェームス・シールズ投手

 

MLBで最後に10完投を達成したのは2011年のジェームス・シールズ投手。
ただ、2011年に11完投(4完封)しましたが、それ以外の年は3完投が最高でした。

かつての9年連続二桁投手も、2019年は所属球団が無くシーズンを終えました。
年齢的にも厳しくなってきており、MLBでの復活登板がみられるかは微妙です。

[ James Anthony Shields 通算成績 ]
  • 通算 407試合 145勝139敗 4.01

 

① サイヤング賞を受賞した投手の「完投数」

 

MLBにも年間最高投手に与えられるサイヤング賞があります。
そこで、2011年以降のサイヤング賞投手の完投数を振り返ります。

調べてみると、2014年のクレイトン・カーショー投手の6完投が最多
多くの投手が5完投以下で、MLBでは完投に対する評価は無くなりつつあります。

アメリカンリーグ ナショナルリーグ
2011 クレイトン・カーショー (5) ジャスティン・バーランダー (4)
2012 R・A・ディッキー (5) デビッド・プライス (2)
2013 クレイトン・カーショー (3) マックス・シャーザー (0)
2014 クレイトン・カーショー (6) コーリー・クルーバー (3)
2015 ジェイク・アリエタ (4) ダラス・カイケル (3)
2016 マックス・シャーザー (1) リック・ポーセロ (3)
2017 マックス・シャーザー (2) コーリー・クルーバー (5)
2018 ブレイク・スネル (0) ジェイコブ・デグロム (1)
2019 ジャスティン・バーランダー (2) ジェイコブ・デグロム (0)

 

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② カープで最後の「10完投」は黒田博樹投手

 

カープで最後に10完投をした投手は誰かを調べてみました。
かなりデータをさかのぼってみたが、黒田博樹投手の2005年が最後

その後も黒田博樹投手の7完投がMAXで、前田健太投手でも5完投がMAX。

16年前までさかのぼらないといけないほど、近年では10完投はいません。
黒田博樹投手でも2001年の13完投を加えても10完投を達成したのは2回です。

図7 カープ先発のチーム最高完投数

 

さらにさかぼってみましたが、元エースの2人が複数回達成していました。
北別府学氏がプロ通算で6回、佐々岡真司氏がプロ通算で2回を記録しています。

◎ 北別府学投手

  • 1979年 12完投
  • 1981年 13完投
  • 1982年 19完投
  • 1983年 12完投
  • 1986年 17完投
  • 1988年 13完投

◎ 佐々岡真司投手

  • 1991年 13完投
  • 1999年 13完投

 

ここまでわかったこと

 

ここまでわかったことをまとめます。

  • 完投数は年々減少する傾向にある
  • セ・リーグよりもパ・リーグの減少傾向が強い
  • 現役投手の中で完投数最多は涌井秀章投手
  • 涌井秀章投手も2011年から完投数が激減
  • 沢村賞の基準である10完投は2019年は0人
  • 2011年以降の沢村賞投手で10完投は2人のみ
  • 10完投という沢村賞の基準の再検討も必要
  • カープで最後の10完投した投手は黒田博樹投手
  • 北別府学投手が6度、佐々岡真司投手が2度記録

 

今回のまとめ

 

今回は先発投手の完投を中心に話を進めてきました。
近年は投手の分業制が進み、完投する投手が減少しています。
障害予防のため100球を基準に各チームで球数制限も行っています。

昭和のような「先発は試合の最後まで」という価値観も変わってきました。
むしろ、故障を避けるため完投したくない投手の方が多いように思います。

完投するのが難しくなった今、沢村賞の基準も検討する時期にあります。
現実的に10完投する投手はおらず、投手起用自体も変わってきています。
変わりゆく野球界の中でタイトルの基準も変化していくべきかも知れません。

ただ、先発完投型の投手はファンとしてもワクワクするのも事実です。
100球が近づくたびに「そろそろ交代か」と思ってしまうのは正直残念。
ベンチサイドも「100球制限ありき」で次の準備し始めるのもなんだか寂しい。
チームに1人くらいは最後まで投げ切れる強い投手がいて欲しいと思います。

時代とともに野球のスタイルも変化し価値観も変わっていきます。
しかし、カープ先発陣に「先発完投」投手が現れるのを期待しています。

 

 

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