以前はよく見かけたプロ野球界のスイッチヒッター。
今回は現在のスイッチヒッターとそれに関するデータを紹介していきます。
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また、使用している写真は著作者・肖像者に連絡をとり許可を頂いています。
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プロ野球のスイッチヒッターたち
今回は投手は除外し、野手のみピックアップしました。
2019年開幕時のセ・リーグのスイッチヒッターは以下の通りです。
そして、パ・リーグのスイッチヒッターは以下通りです。
見ての通り、セ・リーグのスイッチヒッターはパ・リーグに比べて少ない状況です。
ただ、2020年からは3人が右打席に専念し、1人が戦力外通告を受けました。
2020年のプロ野球はさらにスイッチヒッターが「絶滅危惧」の状態になっています。
また、現状でレギュラーで活躍しているのは金子侑司選手のみ。
田中和基選手も2018年のブレイクで期待されていましたが、2019年は失速。
① 球団別にみたスイッチヒッターの在籍数
球団別に見ていくと、ヤクルト・ソフトバンクの3球団は0人でした。
最多は日本ハム・ロッテの2人で、スイッチヒッターが多く在籍する球団は無いようです。
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② 2020年のルーキー(新人選手)のスイッチヒッター
2020年のルーキーでスイッチヒッターは2人。
やはり2人ともこれまで通り俊足タイプの選手でした。
ともにパ・リーグの入団ということで、さらにリーグ間での差が広がります。
このままいくと2020年はセ・リーグは3人、パ・リーグは7人となる予定です。
もちろん新たにスイッチヒッターに転向する選手も出てくる可能性もあります。
しかし、近年では以前のように積極的に転向することも少なくなりました。
結果に繋がりにくいことと、野球自体の考え方が変わったことの影響しています。
③ カープの歴代スイッチヒッターたち
カープの歴代スイッチヒッターたちを振り返ります。
彼らの主な成績は以下の通りです。
安打数 | 獲得タイトル | |
---|---|---|
高橋慶彦 | 1826安打 | 盗塁王3回・ベストナイン5回 |
山崎隆三 | 1404安打 | ベストナイン3回・ゴールデングラブ賞4回 |
正田耕三 | 1546安打 | 首位打者2回・盗塁王1回・ベストナイン2回・ゴールデングラブ賞5回 |
木村拓也 | 1049安打 | |
井生崇光 | 412安打 | |
森笠繁 | 74安打 | |
上村和裕 | 4安打 | |
上本崇司 | 9安打 |
高橋慶彦選手、正田耕三選手、山崎隆三選手の活躍はご存じの通り。
3人が1~3番に並ぶ時期もあり、もう2度と見られないであろう打線を組んでいました。
輝かしい上3名の記録に反して、近年ではスイッチヒッターは活躍していません。
上本崇司選手も2019年のシーズン途中で断念して、右打席のみに専念しています。
結果も出ず、本人もしっくりとこなかったようでコーチとの話し合いで決まりました。
そのため現在のカープにはスイッチヒッターが1人も存在していないことになります。
スイッチヒッターのメリット
一般的にスイッチヒッターの利点としてあげられるのは以下の通りです。
- 右対右、左対左の対戦を避けられる
- 右打ちが左打ちもすることで内野安打となりやすい
- 体の左右のバランスが取れてケガをしにくい
近年では外に逃げるスライダー系の球を決め球に使う投手が増えました。
そのため、逃げる球を避けるために転向するケースもあったように思います。
とはいえ、本当にそれが有効なのかというと近年の成功事例は少ない印象です。
むしろ、スイッチヒッターに転向しても元に戻すケースが目立ちます。
DeNAの大和選手、阪神の江越大賀選手、そして先ほどの上本崇司選手など。
プロ入り後にスイッチヒッターに転向して上手くいくことは少なくなりました。
昔であれば「結果が出るまで猛練習」という風潮でしたが現代では変わりました。
最後のケガの減少に関してはなんとも言えないかなと思います。
というのも、スイッチヒッターに転向する時点で練習量自体は当然増えます。
また、いくら左右で振っても同じように振るわけでもなく確実なことは言えません。
左右差ならコンディショニングをしっかり取り組めばカバー出来ます。
そもそも、左右差にこだわる必要があるのかも考えなければいけません。
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① 大和選手の「対左右投手」の打撃成績
大和選手がスイッチヒッターに転向したのは2017年。
これを見ると確かに前年が対右投手に対して.200を切る数字で悪い数字。
転向した2017年には.270を超えて数字が大きく改善しています。
こうして見ると、対右投手の過去最高打率を残し成功したように見えます。
しかし、右打席に専念した2018年には再び.220程度に落ち込みました。
2019年もここまでは.210前後とあまり効果が出てないように見えます。
図2 大和選手の対右・左投手の打率
確かに「逃げる球」の成績を見ると2017年の数字は大きく改善しています。
2016年が極端に悪すぎた可能性もありますが、傾向として良いものです。
図3 スライダーの打撃成績
単純に見れば、結果が出ているのになぜ元に戻したのかと疑問も浮かびます。
その点について、本人はメディアを通じて以下のようにコメントしています。
「ある程度、バットが振れるけど、そこから先にいかない。キャンプ中も自分の納得する打球もなく、なんとなくヒットが出ている感じでした」
~ 広島・上本、シーズン途中でスイッチヒッターを断念した理由 / SUNSPO.COM https://www.sanspo.com/baseball/news/20190630/car19063013000001-n1.html
「右でいきます。限界でした。キャンプ中も自分の納得する打球もなく、なんとなくヒットが出ている感じでした。」
~ 打率好調なのに1年で左打ち封印 DeNA大和がスイッチを止めた理由 / 産経新聞
https://www.sankei.com/west/news/180501/wst1805010040-n1.html
これらを考えると、数字よりも自分の中でしっくりこなかった面が大きいのかも知れません。
また、移籍1年目の開幕から打撃不振となり、結果も出ず何か変えたかったとも考えられます。
- 2018年開幕6試合 打率 .148 14打数2安打
ただ開幕して間もないこともあり、数字だけで考えるとそこまで深刻ではないとも言えます。
やはり左打ちに対して何か「ひっかかるもの」があったことが大きかったように思います。
また、大和選手本人のインスタグラムで以下のようにコメントしています。
一部のメディアで「阪神でやらされた」というニュアンスで報道されたことに対しての配慮でした。
「スイッチは勧められ自分の意思で始めてしっかりと教えて頂き感謝しています!今回は自分で限界を感じ自分の意思で辞めようと思いました。自分の野球人生でとてもいい経験ができました。」
大和選手のインスタグラム 2018年4月8日
https://www.instagram.com/p/BhTl9tAnwXP/?utm_source=ig_web_copy_link
② スイッチヒッターを辞める選手は多い
大和選手のようにスイッチヒッターを辞める選手も多く見られます。
- 石川雄洋 2006年8月~2007年
- 福田秀平 2007年~2010年 ※高校➂~
- 熊代聖人 2011年オフ~2013年3月
- 菊池涼介 2013年11月~不明
- 大和 2017年~2018年4月
- 上本崇司 2014年秋季キャンプ~2019年シーズン中
- 江越大賀 2017年秋季キャンプ~2018年3月
- 熊谷敬宥 2018年
- 狩野行寿 2018年 ※ 2019年オフ引退
- 佐野晧大 2018~2019年
- 吉川大幾 2012~2016年7月
辞めた理由として上記の大和選手以外は以下のようにコメントしています。
[ 上本崇司選手 ]
「ある程度、バットが振れるけど、そこから先にいかない。キャンプ中も自分の納得する打球もなく、なんとなくヒットが出ている感じでした。」
~ 広島・上本、シーズン途中でスイッチヒッターを断念した理由 / SUNSPO.COM https://www.sanspo.com/baseball/news/20190630/car19063013000001-n1.html
[ 江越大賀選手 ]
「無駄ではなかった。1軍クラスの投手(を打つこと)は厳しいと思ったので。」
~ 江越、右打席に専念 スイッチヒッター断念も「無駄ではなかった」 / デイリー https://www.daily.co.jp/tigers/2018/03/17/0011075481.shtml
[ 熊谷敬宥選手 ]
「悩みましたが、自分がどうやったら(プロの世界で)生きていけるかと考えた時に、右に集中した方が自分のためになると思った。」
~ 阪神・熊谷 スイッチヒッターやめ、右打ちに専念「どうやったら生きていけるかと考えた」 / スポニチ https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2019/03/01/kiji/20190301s00001173180000c.html
[ 佐野晧大選手 ]
「ファームでは左でも手応えがあったけど、1軍では打てなかった。(投手で入団し)プロになって6年。右打席1本で生きていくと決めました。」
~ オリックス佐野860万円増「走力を評価」足に自信 / 日刊スポーツ https://www.nikkansports.com/baseball/news/201911060000326.html
いずれも1軍レベルでは厳しい、感覚的にしっくりこないなどの理由で辞めています。
ある程度の年齢になってスイッチヒッターに変更するのは高いレベルでは難しいのかもしれません。
③ 1度辞めて戻した藤井淳志選手と金子侑司選手
逆に一旦は辞めて、再びスイッチヒッターに戻した選手もいます。
- 藤井淳志 2007~2008年
- 金子侑司 2014~2014年の5月下旬
藤井淳志選手は2007年から右打席に専念するも、結果は振るわず。
結果、2008年オフのドミニカのウィンターリーグから元に戻したようです。
また金子侑司選手は2014年開幕から伊原春樹監督の方針で左打ちに専念。
しかし、極度の打撃不振から打撃コーチに申し出て、元に戻しています。
スイッチヒッターに転向して結果が出ず、元に戻す選手もいれば。
2人のようにスイッチヒッターを辞めて結果が出ず、元に戻す選手もいます。
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④ スイッチヒッターに転向した時期
これまでに出てきた選手がいつスイッチヒッターに転向したのかを分けていきます。
[ アマチュア時代 ]
- 小学 若林晃弘・金子侑司
- 高校 杉谷拳士 ②・加藤翔平 ①・三家和真 ②・田中和基
- 大学 藤井淳志 ③
[ プロ野球入り後 ]
- 高卒入団 植田海 ➁・姫野優也 ①・佐野晧大 ➃
- 大卒入団 菊池涼介 ➁・大和 ⑨・上本崇司 ➁・江越大賀 ➂・熊谷敬宥 ➀
- 独立入団 西森将司 ① (1年目25歳)
プロ入り後を見ると全員に共通していることとして「俊足」と「右打ち」の2つです。
ただ、姫野優也選手は俊足と言われているようですが、公開されているのは6.2秒。
これをプロレベルで俊足と呼ぶかどうか怪しいですが、その他はいずれも5秒台を記録。
基本的に俊足選手に左打ちを加えることで活路を見出そうと取り組んだことがわかります。
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⑤ 「野球界のセオリー」が必ずしも当てはまらない
野球界では右投手対右打者、左投手対左打者は打者が不利とされています。
そのため、スイッチヒッターはどちらも回避できることが有利とされています。
確かに、上記のような理由で上手くいくこともあるのも事実だと思います。
しかし、実際にはセオリーの真逆もいたり、どちらも苦にしない選手もいます。
左打者だけど左投手が打ちやすい、成績が良い打者は結構存在しています。
そうなると、スイッチヒッターの利点もあまり無いようにも思います。
同じことが代打にも言えることですが、必ずしも定説は当てはまりません。
様々なことを考えると、メリットとデメリットを踏まえる必要もあるかと思います。
以前のように単純な対戦形式の姿も少しずつ消えていくのかも知れません。
スイッチヒッターに関する予備知識
最後にスイッチヒッターに関する予備知識について触れていきます。
隠れスイッチヒッター、バットの使い分け、長距離砲候補がテーマです。
① 「隠れスイッチヒッター」だった嶺井博希選手
スイッチヒッター登録するも右打席しか立っていないのが嶺井博希選手。
入団した2014~2016年の3年間はスイッチヒッターとして登録されていました。
しかし、プロでは1度も左打席に立つことはなく、右打者の登録に変更されたようです。
この件に関して特に報道もないので打席に立たなかった理由を本人に聞いてみたいですね。
② 左右の打席でバットを変えるスイッチヒッター
選手の中には左右の打席でバットを変える選手もいます。
- 藤井淳志選手
- 加藤翔平選手
どう使い分けるかは選手によって異なるので一概には言えません。
その選手の感覚や打撃スタイルによって選ぶバットは当然変わってきます。
全く逆の意識だったりもしますし、バットもそれに応じた形になってきます。
もちろん、左右どちらかの打席の選手でも使い分けをすることはあります。
また、シーズン中に重さや長さを変更してみたりするのが現実のようです。
そう考えると左右の打席で変えるのもさほど不思議ではないかも知れません。
③ 田中和基選手は「長距離砲スイッチヒッター」候補
現在のスイッチヒッターの中で長打力が期待出来るのは田中和基選手のみ。
2018年には生え抜き最多の18本塁打を打ち、2年目で新人王にも輝きました。
オフには日米野球で侍ジャパンに選出されて、飛躍の1年となりました。

しかし、2019年は3月に右足首捻挫、4月から違和感のあった左手三角骨骨折が判明。
その影響もあり、右打席は封印することになり、「左打者」として出場することに。
結果、59試合、打率 .188、本塁打1本と本来の力は発揮できずシーズンを終えました。
いずれにせよ、2020年は改めてセンターの定位置を取り返す1年になります。
2年目になる辰己涼介選手も勢いがあり、開幕で外れると厳しい1年になるかも知れません。
トリプルスリーとまではいかなくても、.280、24本、30盗塁くらいは出来そうな選手。
ひとまずケガ無くレギュラーで1年を過ごした時にどんな数字を残すのか楽しみではあります。
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ここまでわかったこと
ここまでわかったことをまとめます。
- 2019年開幕時はセ・リーグは5人、パ・リーグは7人
- レギュラーは金子侑司選手のみ
- ヤクルトとソフトバンクは0人
- 2017年の大和選手はスイッチヒッター転向が成功
- 辞める選手は1軍レベルで通用しない、感覚が合わないなど
- 1度スイッチヒッターを辞めて戻る選手もいる
- プロ入り後の転向組は辞めるケースが多い
- 嶺井博希選手は隠れスイッチヒッターだった
- 2020年のスイッチヒッタールーキーはパ・リーグに2人
- 田中和基選手は長距離砲スイッチヒッターの可能性
- 左右の打席でバットを変える選手もいる
今回のまとめ
今回はプロ野球界のスイッチヒッターについて話を進めてきました。
近年では主力として活躍する選手もほとんど目にすることが無くなりました。
スイッチヒッター転向後に上手くいかないケースも多いのも事実です。
また、野球に対する考え方が変化してきた背景もあります。
成功率やその効果、また練習環境など様々な理由から減少傾向にあります。
ただスイッチヒッターのスター選手が登場すると少し変化するかも知れません。
上本崇司選手がスイッチヒッターを辞めて、カープは0人になりました。
チームの方針として以前のようにそこにこだわる姿も無くなってきたようです。
「足が速い内野手はスイッチヒッターに」という思考は消えつつあります。
近年の成功例が無いこととしなくても成功していることの流れかと思います。
時代は平成から令和に変わり、野球自体も変化していきます。
ただ、個人的にはスイッチヒッターのスター選手の登場を密かに期待しています。
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