2020年は東京オリンピックも開催されてスポーツが盛り上がる1年です。
今回はスポーツ映像の上映について関係する法律とともに話を進めていきます。
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野球などのスポーツ中継は「著作物」に該当
そもそも野球中継が著作物にあたるのかどうかを考えます。
映像関係の著作権に関しては、著作権法2条3項に以下の通りの記があります。
[ 著作権法2条3項 ]
「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
「映画」と聞くと違和感がありますが、一般的には「映像」と捉えることになります。
上記でポイントとなるのは『視覚的又は視覚的効果』と『物に固定されている』という点です。
① スポーツ中継は著作物
スポーツ中継では以下のように視聴者のために様々な工夫がされています。
- 多くのカメラを使用し、迫力のある撮影のため工夫
- 成績がわかりやすいようにデータを表示
- リプレイなどを用いてプレイ検証をする
- 他チームの試合状況などもお知らせ など
以上はごく一部ですが、スポーツ中継には様々な独自の工夫が加えられています。
漠然と1つのカメラで撮影し、無言で何の表示も無く“ただ流している”訳ではありません。
そういった意味で『視覚的又は視覚的効果』が多く含まれているので著作物に該当します。
また、現在の中継はほぼ同時に「放送と同時に録画」されています。
なので、リプレイなどの映像が流れるのであって、“ただ流している”訳ではありません。
そのため、『物に固定されている』という条件を満たしており著作物に該当します。
以上より、スポーツ中継は著作権法2条3項に該当し、十分に著作物と認められます。
② 東京地裁の判例
東京地裁の判例でも以下のような文言があります。
はっきりとテレビの映像は『著作物』であると明記されています。
[ 東京地裁 判例 (平成6年3月 30日 ) ]
テレビの生放送についても,その影像が生中継と同時に録画されているような場合には,固定性の要件を満たし,著作物性を有するというべきである。
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テレビ映像を上映する場合の条件
テレビ映像の上映に関しては、著作権法38条3項に以下の文言があります。
[ 著作権法38条3項(営利を目的としない上演等)]
放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。)は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。
① ひとつめのポイントは「営利目的」
ポイントとなるのは『営利を目的とせず』と『聴衆又は観衆から料金を受けない』です。
例えば、以下のようなケースだと営利目的とみなされるので違法行為となります。
- 入店料・観覧料の徴収
- スポンサー広告料の発生
- 物販や有料で飲食の提供
飲食店などのようにただリアルタイムでテレビを付けているものは該当しません。
サラリーマンが定食屋に入って、ごはんを食べながらテレビを見ているような光景ですね。
この場合は料金を別で取っている訳ではありませんので、問題はありません。
② ふたつめのポイントは「受信装置」
次にポイントとなるのは『受信装置』と『家庭用受信装置』です。
受信装置というのは「一般向けのテレビ」と考えてもらうとわかりやすいです。
さきほどの定食屋の例のように、一般的なテレビなら大丈夫ということになります。
テレビの上映が許可されている2つのポイント
- 営利目的ではない場合
- テレビ(受信装置)を用いている場合
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スポーツ中継の「スクリーン上映」は伝達権の侵害
では、「受信装置」ではないものとは何でしょうか?
最もわかりやすいのは『スクリーン上映』など”外部に出力”するものです。
上記に関しては、著作権法第100条に以下の文言があります。
[ 第100条(テレビジョン放送の伝達権)]
放送事業者は、そのテレビジョン放送又はこれを受信して行なう有線放送を受信して、影像を拡大する特別の装置を用いてその放送を公に伝達する権利を専有する。
ここでポイントになるのは『映像を拡大する特別の装置』と『専有』です。
上記は放送事業者は映像を拡大する特別の装置を用いた権利を専有するという文言です。
つまり、“放送事業者以外には許されていません”という意味となります。
プロジェクターなどの拡大機器を用いて、スクリーン(壁)に上映する場合は違法となります。
- 受信装置・家庭用受信装置 ⇨ 一般的なテレビ
- 映像を拡大する特別の装置 ⇨ プロジェクター・マルチディスプレイなど
※ 「マルチディスプレイ」とは画面をつなげて大きく映し出す方法

ここで言うプロジェクターは「多くの人に向けた」ものと理解してください。
① パブリックビューイングは「放送事業者の許可」が必要
もしパブリックビューイングを行いたい場合はどうでしょう?
その場合は『放送事業者に対して許可』を得る必要な場合が一般的です。
その申請に関しては各大会・各競技団体などで異なります。
それぞれの申請先で詳細を確認し、必要であれば申請してください。
サッカーやラグビーのワールドカップは以下が受付先となっています。
その場合は「ライセンス料・視聴契約料」として20万円以上が必要のようです。
外部記事
② 「スポーツバー」でのテレビの上映
今回、気になったのがスポーツバーなどで上映している場合です。
少し調べてみたのですが、多くの場合で「大型テレビ」を使用しているようです。
この場合であれば「家庭用受信装置」なので許可は必要ないかも知れません。
最近はテレビも大型のものでも比較的安く価格で購入できるようになってきました。
こうしたものを利用することでお店側も工夫しているのかもしれません。
ただ、どんどん大きくなっていった場合はサイズの規制がかかるかも知れませんね。
③ 「プロジェクター上映」しているお店の場合
とはいえ、プロジェクターで上映しているお店もあります。
他店と差別化できますし、みんなで応援している雰囲気も出せるので良いですね。
そういった場合はどうしているか調べてみると「業務用契約」があるそうです。
例えば、東京にあるベースボール居酒屋 リリーズ神田のホームページには以下の文言がありました
どの球団の主催試合でも中継できるよう、著作権をクリアした業務用のCS野球チャンネルをすべて契約しておりますので、中継がある限りはどの試合でも放映可能です。
~ リリーズ神田 よくある質問
事業用契約であれば法的な問題も気にすることなく上映できますね。
ベースボール居酒屋 リリーズ神田がお近くの方はぜひご利用ください。
④ DVDやブルーレイの上映も違法
DVDやブルーレイに録画されたものも上映には条件があります。
上映した場合は『複製権』と『上演権』の侵害にあたり違法となります。
[ 著作権法2条1項15号 ]
複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること
録画(複製)することは許されていますが、公開することは許されていません。
あくまでも「私的利用の範囲」までで、店舗などで上映することはできません。
市販のDVDやBDをお金を出して買った場合も同じです。
支払った金額は「使用・所有する権利」であって「著作権」ではありません。
そのため、上映するには著作元の許可が必要となってきます。
どうしても必要な場合は以下のような専門業者から業務用DVDを購入しましょう。

基本的に家庭内や個人の利用であれば違法になることはありません。
CDに関しても同じく金銭の発生する状況であれば著作権の侵害となります。
音楽の場合は著作権の中でも「演奏権 (著作権第22条)」に該当します。
もし店舗などでBGMに使う場合はJASRACに使用料の支払いが必要です。
例) 店舗面積500㎡以内であれば年間6000円
ただし、クラシック音楽など死後70年を経過した場合は著作権侵害にはなりません。
とはいえ、演奏などで著作隣接権が発生している場合には許可が必要となります。
似たような話になりますが、「音楽配信サービス」にも著作権が関係してきます。
Apple musicは「JASRAC」など管理団体に使用料を払うことで店内BGMとして使用できます。
Google Play Music、Spotify、LINE MUSIC、レコチョクBestなどは営利目的は禁止されています。
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④ スポーツ上映で違法した場合の罰則
スポーツ上映で著作権侵害で訴えられた場合は以下の罰則が発生します。
民事は個人が個人に対して、刑事は国家が個人に対して訴求されます。
- 民事 ⇨ 差し止め請求、損害賠償請求
- 刑事 ⇨ 最高懲役10年又は1000万円以下の罰金、あるいはその両方
パブリックビューイングのQ&A
ここまでの内容をQ&Aでまとめます。
テレビを上映するのに有料でも大丈夫ですか?
営利を目的としない場合のみ許可されています。
上映する場合はどんなものなら大丈夫ですか?
一般的なテレビであれば許可されています。
パブリックビューイングをしたいのですが?
管理をしている各放送事業者から許可を得てください。
DVDなら上映しても良いですか?
私的な利用や家庭内のみでの上映であれば許されています。
① 一緒に読みたい「野球の著作権・肖像権」の記事の紹介
ここまで読まれた方はこちらの記事も読んで頂くと深く理解できます。
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「パブリックビューイングと著作権」のまとめ
今回はスポーツ中継の上映について進めてきました。
2020年は東京オリンピックもありスポーツで盛り上がる1年です。
それに伴い、様々な場面でみんなで応援する機会もあるかと思います。
みんなで集まって応援するスタイルはとても盛り上がります。
ただ、知らず知らずのうちに著作権の違法になっていることもあります。
知らないがゆえに後で損害賠償請求されることもあるかも知れません。
特に飲食店経営や会社などでは多くの人が滞在しています。
そういう場合は上記のことを気を付けて頂ければ大丈夫です。
東京オリンピックでも野球の試合が行われます。
違法にならない形でみんなで野球やスポーツを盛り上げましょう。
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