9月30日にパ・リーグTVから違法アップロードについて注意喚起が発表されました。
今回はその注意喚起を振り返ると同時に違法アップロードの危険性ついて触れていきます。
ブログ運営の方針
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また、使用している写真は著作者・肖像者に連絡をとり許可を頂いています。
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パ・リーグTVからの公式発表
2020年9月30日にパ・リーグTVから違法アップロードについて以下の発表がありました。
ここ最近、Twitterなどのソーシャルメディア上に本サービスの試合映像を投稿されているケースが散⾒されております。
本サービスを通じて当社が利⽤者に対して提供するサービスに関する著作権、著作隣接権、商標権、特許権その他⼀切の知的財産権は、当社または正当な権利を有する権利者に帰属するものであり、無断でソーシャルメディア上に本サービスの試合映像を投稿することは、規約で禁⽌されております。
このような⾏為を発⾒した場合、本サービスの利⽤契約を解除させていただきます。また、このような⾏為は、著作権を侵害するものであり、権利者から損害賠償や刑事告訴される場合もあります。
最近はTwitterなどに多くの野球中継の動画が違法に投稿されています。
またYouTubeにおいても同様に編集されたものを含め、多くの動画が違法に投稿されています。
そういった現状を踏まえ、権利侵害の意識も薄れつつある昨今となっています。
改めて、著作権侵害が違法であるという認識と同時に注意喚起として良いものだったと感じます。
① 違法アップロードについてパ・リーグTVへ質問した回答
そこで今回の公式発表についてパ・リーグTVにいくつか質問してみました。
パ・リーグTVさんが管理するのはパ・リーグ全ての試合ですか?
パ・リーグ主催試合のみとなります。
パ・リーグの2軍の試合も管理しているのでしょうか?
2軍の試合も管理しております。
管理する範囲は試合のみでしょうか?(例えば野球番組なども含むのか)
試合のみを対象としております。
YouTubeの違法アップロードも対策しているのでしょうか?
YouTubeも対策しております。
一部で「スクリーンショットなら問題ない」という認識がありますが?
お控えいただくようお願いします。
② パ・リーグTVの回答の整理
上記から整理すると以下のようになります。
基本的にはパ・リーグ主催試合の映像すべてを管理していることになります。
- 管理するのは1軍・2軍のパ・リーグ主催試合映像
- YouTubeの違法アップロード対策も実施
- 動画のみでなくスクリーンショットも禁止
[ パ・リーグTVの配信状況 ]
配信される試合 | 配信されない試合 |
---|---|
パ・リーグ主催のオープン戦・公式戦 | セ・リーグ主催のオープン戦・公式戦 |
パ・リーグ・巨人・阪神主催の交流戦 | セ・リーグ主催の交流戦 (巨人・阪神を除く) |
パ・リーグ主催のCSシリーズ | セ・リーグ主催のCSシリーズ |
パ・リーグ主催の二軍公式戦 | セ・リーグ主催の二軍公式戦 |
オールスター | |
日本シリーズ |
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パ・リーグTVの「利用規約」の記載から
改めて、パ・リーグTVの「利用規約」に目を通してみました。
全て読んでみると、利用規約の第10条に以下のような文言がありました。
[ パ・リーグTV 利用規約 第10条 ]本サービスを通じて当社が利用者に対して提供するサービス(本コンテンツを含みます)に関する著作権、著作隣接権、商標権、特許権その他一切の知的財産権は、当社または正当な権利を有する権利者に帰属するものであり、本サービスの利用料を支払うことで、利用者にいかなる権利も付与されるものではありません。
“帰属”など難しい言葉がありますが、要約すると以下の通りです。
「映像(画像含む)の権利はパ・リーグTVが所有し、利用者にはその権利はない」
① 損害賠償に関する文言
また、損害賠償について以下のような文言もありました。
[ パ・リーグTV 利用規約 第16条 ]利用者が本規約に違反し、または本サービスの利用に伴う故意もしくは過失により、当社または第三者に対して損害を与えた場合、利用者は自己の責任と費用によって一切の損害および費用を賠償、補填するものとします。
冒頭の公式発表でもあったように、違反に伴い損害賠償などの責任が生じると明記されています。
ただ、これはありとあらゆる著作権侵害に該当するもので、パ・リーグTVだからではありません。
どんなサービスにこのうよな文言はあり、特別なものではありません。
逆にどんなものにも「権利」が存在し、勝手に利用できないことが法で定められています。
② 著作権侵害による罰則は「重い罪」に
著作権侵害で訴えられた場合は「民事」と「刑事」で裁かれます。
刑事では文字通り、「警察」が介入する可能性があるということです。
また、民事と刑事では以下のような罰則となっています。
刑事で裁かされるとかなり重い罪となるのがわかるかと思います。
[ 民事と刑事の罰則 ]
罰則 | |
---|---|
民事 | 差し止め請求、損害賠償請求 |
刑事 | 最高懲役10年又は1000万円以下の罰金、あるいはその両方 |
違法アップロードによる著作権侵害は以下の記事で詳しく解説しています。
【 年間691件の検挙 】野球中継・番組をSNSやYouTubeへ「違法アップロード」する危険性
近年、野球中継や野球番組のネット投稿を多く目にするようになりました。知らないことも多いかと思うので法律に沿った形で違法アップロードについて話を進めます。 ブログ運営の方針当ブログ...
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パ・リーグTVは「パ・リーグ球団が出資した事業」の1つ
そもそも「パ・リーグTV」とはどんなものなのでしょうか。
パ・リーグTVは2012年からパシフィックリーグマーケティング(PLM)が運営しています。
会社概要
社名 パシフィックリーグマーケティング
設立 2007年5月
資本金 3000万円
株主 パ・リーグ6球団
代表取締役 根岸友喜
〒103-0007
東京都中央区日本橋浜町1-12-9 日本橋浜町ビル3F
https://www.pacificleague.jp/
- JTBとジョンソン&ジョンソンでセールスやマーケティングに携わる。
- 2007年に楽天や球団に入社し、事業企画と広報の責任者を務める。
- 2013年にPLMに入社し、マーケティング室室長を務める。
- 2017年に現職に就く。
- グロービス経営大学院 (MBA) 修了
① パ・リーグ6球団が共同出資した「合弁事業会社」
PLMはパ・リーグ6球団が共同出資し、合弁事業会社として運営しています。
つまり、「パ・リーグTV」はパ・リーグ6球団が直接的に関与するメディアとなっています。
球団それぞれが試合映像の制作を行うことで、各球団が映像の著作権を保有しています。
それらをPLMが一括で管理することで、映像に関わる全ての権利を管理しています。
そのため、収益源を全て管理でき、2018年はの売り上げは50億円超と報告されています。
これにより各球団の分配金も増加でき、球団にとって貴重な収入源となっています。
② 「DAZN」や「Rakutenパ・リーグ Special」に映像提供
PLMは2018~2022年まで以下の2社に映像提供を行っています。
- DAZN
(Perform Group)
- Rakutenパ・リーグSpecial (楽天株式会社)
- スポナビライブ [~2018年5月] (ソフトバンク)
つまり、パ・リーグTVと上記2社のパ・リーグの映像は同一のものです。
結果的に、2社の権利侵害を行えば、提供元のPLMの権利侵害とも言えるでしょう。
上記のように、パ・リーグの試合映像の全ての権利はPLMが持っています。
PLMはパ・リーグ6球団が作った組織のため、全てのライセンス管理が可能です。
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③ 今回の注意喚起は「パ・リーグ」が出したもの
パ・リーグTVからの注意喚起は“パ・リーグから出されたもの”と言っても良いでしょう。
パ・リーグとしては違法アップロードについては厳格な姿勢をとっているとも言えます。
こうしてリーグ所属球団の権利を一括管理することで今回のような対応が可能となります。
セ・リーグのように各球団が制作・管理をするとなると同じようにはいかないでしょう。
パ・リーグに比べ、セ・リーグの違法アップロードが多いのもそういった背景があります。
セ・リーグもPLM的な組織化を行えば、一括で対応でき人材もコストもカットも可能です。
将来的にはセ・リーグもPLMのような組織作りが行えるようになるのが理想です。
また、運営ノウハウを持ったPLMが12球団を一括管理するようになると理想的になります。
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野球中継の投稿は「公式アカウント」を利用する
野球中継を投稿したい時は、公式アカウントの「リツイート」や「URL」を使いましょう。
最近は多くのプロ野球公式アカウントで野球中継をピックアップした動画を投稿されています。
① Twitterの場合は「リツイート」を利用
Twitterであれば以下の公式アカウントが投稿してくれています。
投稿したい動画がない場合は、文字だけ投稿して違法アップロードは控えましょう。
公式URL | |
---|---|
パ・リーグTV | https://twitter.com/PacificleagueTV |
スカパー!プロ野球 | https://twitter.com/sptv_baseball |
DAZN JAPAN | https://twitter.com/DAZN_JPN |
イレブンスポーツ | https://twitter.com/ElevenSportsJP |
② 野球中継の違法アップロードは「肖像権侵害」にも
野球中継の違法アップロードが「著作権の侵害」だという認識はあるかと思います。
それは確かなのですが、著作権の侵害と同時に「肖像権の侵害」にも該当します。
一般的に著作権は著作者が所有し、肖像権は人物が所有します。
つまり、野球中継の違法アップロードは2つの権利侵害を犯すことになります。
ただし、プロ野球選手の肖像権は「所属球団」が所有する形となっています。
違法アップロードで肖像権を侵害した場合は、球団の権利を侵害してしまいます。
パ・リーグの場合はパ・リーグ6球団が映像制作をしています。
野球中継の著作権は各球団が所有し、肖像権も各球団が所有する形になります。
プロ野球選手の肖像権に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
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② 多くは「自分だけは摘発されない」という油断
違法アップロードの投稿者の多くは「みんなもやっているから大丈夫」と思っているように思います。
しかし、平成30年には違法アップロードで検挙されたのが691件あったと警視庁から発表されています。
交通違反と同じように、他の人もやっているから自分だけは大丈夫というのは錯覚に過ぎません。
同時に「あの人もスピード違反していた」と言ったところで、交通違反が無くならないのと同じです。
年間700件も摘発されいても、その多くの例は報道されないため知る機会は少ないです。
しかし、実際に約700件が摘発され検挙されているという事実があることには変わりありません。
一緒に読みたい「野球の著作権」の記事の紹介
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今回のまとめ
今回はパ・リーグTVの違法アップロードの注意喚起について話を進めてきました。
野球中継の配信事業者が明確に意思表示したのは今回が初めてではないでしょうか。
多くの場合でホームぺージにさらっと掲載しているだけに留まっています。
そのためSNSやYouTubeには多くの違法アップロード動画が溢れかえっています。
パ・リーグTVが出された発表はそうした行為に対し非常に意味のあるものでし。
また、パ・リーグを一括管理するといった体制も合理的なシステムとも言えます。
若い世代の多くが小さな頃からSNSやYouTubeがある環境で育っています。
中には違法という認識がほとんどない人も多いのかも知れないとも感じています。
改めて違法アップロードは違法行為であると認識が必要です。
軽率な行動で後悔しないように注意しながらプロ野球を楽しみましょう。
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