プロ野球退団後も様々な環境で現役選手を続行する選手がいます。
今回は退団後の進路希望で増加している社会人野球について話を進めていきます。
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退団後の進路希望で人気の「社会人野球」
NPB選手を対象にしたアンケートで現役続行を希望する選手は多いです。
中でも近年特に伸びてきているのが「社会人野球・クラブチーム」という進路。
2017年からは希望者は増加し、急激な右肩上がりを示しています。
会社員希望が増えているように、現役続行でも安定を求めている現象かも知れません。
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① 「元所属先」に復帰する選手も増えている
社会人野球の特徴として、元所属先に復帰する選手も増えています。
2016年以降にNPB所属前の企業チームに復帰した選手は以下の通りです。
将来的な指導者「候補」を目途にした復帰が多いのかなという印象です。
チームとしても事情をよく知ってる選手を採用したいというのもわかります。
[ 社会人野球を経由してNPB復帰した選手 ]
復帰チーム | 在籍年度 | |
---|---|---|
赤堀大智 (投手) | セガサミー | 2016-2018 (3年) |
中山慎也 (投手) | JR東海 | 2016-2018 (3年) |
須田幸太 (投手) | JFE東日本 | 2019- |
南川忠亮 (投手) | JR四国 | 2020- |
船越涼太 (捕手) | 王子 | 2020- |
藤井亮太 (捕手・内野・外野) | シティライト岡山 | 2021- |
② 最大のメリットは引退後の「社業専念」
社会人チーム所属の最大のメリットは引退後の職の安定があります。
元NPB選手に限らず、社会人野球を引退した選手の多くが企業に残って仕事を続けています。
もちろんクラブチームに近い状態だと退団後に完全に離れることが多いと思います。
しかし、大手企業では安定した収入を確保するため社業に専念する選手が多い傾向です。
例えば、近田怜王投手は引退後にJR西日本の社員とし勤務しています。
また、2020年9月からは出向の形で京都大学硬式野球部の指導もしています。
また、2016年以降に社会人野球に所属して引退した選手も社業に専念しています。
引退時に家庭がある選手にとってはそのまま残るという選択が最優先かも知れません。
[ 引退後に社業に専念した選手 ]
所属 | 社業専念年度 | |
---|---|---|
玉置隆 | 鴻池運輸株式会社 | 2020- |
勧野甲輝 | 九州三菱自動車 | 2017- |
矢地健人 | 日本製鉄東海REX | 2018- |
武藤好貴 | JR北海道 | 2020- |
同時に「社員」としてコーチで残る選手もいます。
選手時代と同様に社員として働きながら社会人野球に携わっています。
[ 引退後にコーチとなった選手 ]
所属 | コーチ専業年度 | |
---|---|---|
相沢晋 | バイタルネット | 2019- |
川相拓也 | エイジェック | 2020- |
金森敬之 | パナソニック | 2019- |
③ NPBに復帰した選手はわずか3人、2011年以降は0人
社会人野球に進んでNPBに復帰した選手はどれくらいいるのでしょうか。
過去の記録をさかのぼると、社会人野球からNPB復帰を果たしたのはわずか3名のみ。
これまでかなりの人数がNPB退団後に社会人野球に所属しています。
しかし、過去の事例をみるとNPB復帰の可能性はかなり低いと言えます。
[ 社会人野球を経由してNPB復帰した選手 ]
所属 | 復帰後成績 | |
---|---|---|
渡邉孝男 (捕手) | 西武 (1992-2000) サンワード貿易 (2001-2002) 日本ハム (2003-2004) 沖縄電力 (2005-2007) |
出場なし |
宇野雅美 (投手) | 巨人 (1997-1998) カープ (1999) リースキン広島 (2000-2004) ヤクルト(2005-2007) |
6試合 (5回) 0勝0敗 3.60 |
杉原洋 (投手) | ロッテ (2004-2006) NOMOベースボールクラブ (2007-2009) 横浜 (2010-2011) |
1試合 (2回1/3) 0勝0敗 11.57 |
渡邉孝男選手は引退後に柔道整復師の資格をとり、整骨院を開業しています。
NPBに復帰するのも異例ですが、その後に社会人野球に復帰したというのも異例ですね。
④ 新たな目標としての「都市対抗野球出場」
社会人野球に所属すると都市対抗野球を目指すという目標もあります。
実際にここ数年は多くの元NPB選手がチームとして、また補強選手として出場しています。
2019年には15選手、2020年には11選手が出場しています。
若手の枠を奪う側面もありますが、元NPB選手にとってはモチベーションになるでしょう。
[ 第90回都市対抗野球に出場した元プロ野球選手 ]
選手名 | プロ野球所属球団 | |
---|---|---|
日本製鉄室蘭シャークス | 瀬川隼郎 | 日本ハム |
佐藤峻一 | オリックス | |
鈴木駿也 | ソフトバンク | |
日本製鉄鹿島 | 玉置隆 | 阪神 |
伊藤拓郎 | DeNA | |
日立製作所 | 岩嵜恭平 | 中日・オリックス |
JFE東日本 | 須田幸太 | DeNA |
松本啓二郎 (補強選手) (日本製鉄かずさマジック) |
DeNA | |
NTT東日本 | 田中太一 (補強選手) (セガサミー) |
巨人 |
JR東海 | 中田亮二 | 中日 |
三菱日立パワーシステムズ | 加治前竜一 | 巨人 |
ヤマハ | 網谷圭将 | DeNA |
トヨタ自動車 | 細山田武史 | DeNA |
JFE西日本 | 小林寛 | DeNA |
シティライト岡山 | 児山祐斗 | ヤクルト |


[ 第91回都市対抗野球に出場した元プロ野球選手 ]
選手名 | プロ野球所属球団 | |
---|---|---|
JR北海道クラブ | 立田将太 | 日本ハム |
日立製作所 | 岩崎恭平 | 中日・オリックス |
日本製鉄鹿島 | 伊藤拓郎 | DeNA |
トヨタ自動車 | 細山田武史 | DeNA |
ヤマハ | 網谷圭将 | DeNA |
JFE東日本 | 須田幸太 | DeNA |
日本新薬 | 北川倫太郎 (補強選手) (カナフレックス) |
楽天 |
ヤマハ | 船越涼太 (補強選手) (王子) |
カープ |
三菱重工広島 | 堤裕貴 | オリックス |
児山祐斗 (補強選手) (シティライト岡山) |
ヤクルト | |
四国銀行 | 南川忠亮 (補強選手) (JR四国) |
西武 |

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社会人野球という選択肢は「狭き門」に
ただ、社会人野球の形態も時代とともに変化してきています。
時代とともに企業における野球部に対する存在意義は縮小傾向にあります。
① 「野球>社業」から「社業>野球」に変化
昭和時代であれば、午前中に2~3時間ほ社業に従事し、あとは野球に専念するのが大半でした。
しかし、現在ではフルに仕事をしたあとに練習をするというチームも多くなっています。
日によってはグラウンドに選手が揃ってない場合もあり、野球中心から変化しつつあります。
また、野球部設立の目的が「社員確保」というチームも徐々に増えています。
特に体力を必要とする仕事の場合、体力のある野球選手に白羽の矢が立つのはわかります。
② 企業チームの減少とクラブチームの増加
また、企業チームが減少し、クラブチームが増加する傾向にあります(※)。
一概に社会人野球と言っても、会社員の前者と給与の無い後者では待遇は全く異なります。
何を目的として野球を続けるかは個人によって異なります。
ただ、NPB復帰や就職が目的の場合、クラブチームを選択する選手は少ないでしょう。
今後、社会人野球の環境はますます厳しくなっていくのは避けられません。
NPB退団後に社会人野球で安定した仕事と両立するという選択肢は「狭き門」となります。
実際に2020年からは新規で所属する選手は急激に減少しました。
企業の経営が厳しい中、選手の「希望と現実が反比例」する現象は今後も続きます。
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社会人野球の所属一覧
① 2015-2017オフ 自由契約選手
選手名 | 所属球団 | 企業 | |
---|---|---|---|
2015年オフ | 玉置隆 | 阪神 | 新日鐵住金鹿島(現・日本製鉄鹿島) (2016-2019) (※) 鴻池運輸株式会社鹿島支店 (2016-) (※) |
中村憲 (現) | カープ | 福山ローズファイターズ (※) エブリィ緑町店勤務 |
|
藤澤拓斗 (現) | 中日 | JR西日本 (2016-) (※) | |
加賀美希昇 (現) | DeNA | JR西日本 (2016-) (※) | |
赤堀大智 | DeNA | セガサミー (復帰) (2016-2018) 「nap house」開業 (2019/6-) (※) 横浜DeNAベースボールスクールコーチ (2020-) |
|
川崎成晃 | ヤクルト | ロキテクノベースボールクラブ (2016-2018) ダーギー (カラオケ&ダーツバー) (2019-) (※) |
|
細山田武史 (現) | ソフトバンク | トヨタ自動車 (コーチ兼) (※) | |
中村恵吾 | ソフトバンク | シンセリティー (2015/11-2016) 栃木ゴールデンブレーブス (2017-2018)(※) エイジェック女子硬式野球部コーチ (2019-) (※) |
|
勧野甲輝 | ソフトバンク | 九州三菱自動車 (2015/12-2016/12) (※) 九州三菱自動車 営業部 (2015-) |
|
中山慎也 | オリックス | JR東海 (復帰) (2016-2018) (※) | |
矢地健人 | ロッテ | 日本製鉄東海REX (2016-2017) (※) 日本製鉄東海REX勤務 (2016-) (※) A&W. (2020/12-) (※) |
|
2016年オフ | 田中太一 | 巨人 | セガサミー (2017-2020) |
内村賢介 | DeNA | REVENGE99 (2017) (※) ジェイファムコーポレーション (2017) (※) |
|
児山祐斗 (現) | ヤクルト | シティライト岡山 (2017-) (※) | |
佐村トラヴィス幹久 | 阪神 | OBC高島 (2017-2018) (※) | |
中川誠也 (現) | 中日 | REVENGE99 (2017-) (※) ジェイファムコーポレーション (2017) |
|
西原圭大 (現) | カープ | ニチダイ (2017-) (※) | |
佐藤峻一 (現) | オリックス | 日本製鉄室蘭 シャークス (2017-) (※) | |
堤裕貴 (現) | オリックス | 三菱重工広島 (2017-2020) 三菱重工East (2021-) (※) |
|
川満寛弥 | ロッテ | 沖縄電力 (2017-2018) (※) | |
香月良仁 | ロッテ | 鮮ど市場ゴールデンラークス (2017-2018) (※) 熊本ゴールデンラークス ゼネラルマネジャー補佐 (2019-) (※) |
|
相沢晋 | 楽天 | バイタルネット (コーチ兼) (2017-2018) (※) バイタルネット コーチ (2019-) |
|
加藤正志 | 楽天 | REVENGE99 (2017) (※) ジェイファムコーポレーション (2017) (※) 六花亭軟式野球部 (2018-) |
|
2017年オフ | 髙橋洸 | 巨人 | 熊谷組 (2018) (※) 株式会社メディカリJP (2019) バンディッツ・ガールズ (2020-) (※・※) |
川相拓也 | 巨人 | エイジェック (コーチ兼) (2018-2019) (※) エイジェックコーチ (2020) エイジェック女子硬式野球部 (副部長兼コーチ) (2021-) (※) |
|
岸本淳希 (現) | 中日 | 日立製作所 (2018) (※) 熊本ゴールデンラークス (2019-) (※) |
|
古本武尊 | 中日 | Honda鈴鹿 (2018-2019) (※) | |
小林寛 | DeNA | JFE西日本 (2018-2019) (※) | |
松本啓二朗 | DeNA | 新日鉄住金かずさマジック (2018-2020) (※) | |
榎本葵 | ヤクルト | REVENGE99 (※) 富山GRNサンダーバーズ (2018/6-2019) (※) 競輪選手挑戦中 (2020-) (※) |
|
瀬川隼郎 (現) | 日本ハム | 室蘭シャークス (コーチ兼) (2018-) (※) | |
武田久 | 日本ハム | 日本通運 (2018-2019) (※) 日本製鉄東海REX (2020-) (※) |
|
岩崎恭平 (現) | オリックス | 日立製作所 (2018-) (※) | |
金森敬之 | ロッテ | パナソニック (2018) (※) パナソニック コーチ (2019-) |
|
寺嶋寛大 (現) | ロッテ | REVENGE99 (2018-) (※) | |
武藤好貴 | 楽天 | JR北海道クラブ (2018-2019) (※) JR北海道 社業専念 (2020-) |
|
小関翔太 (現) | 楽天 | 新日鉄住金かずさマジック (2018-) (※) | |
北川倫太郎 (現) | 楽天 | カナフレックス (2018-) (※) |
② 2018-2020オフ 自由契約選手
2018年オフ | 福倉健太郎 (現) | 西武 | ビッグモーター (一般就職) (※) 鹿児島ドリームウェーブ (2019-) (※) |
---|---|---|---|
玉村祐典 | 西武 | オールフロンティア (2019) (※) | |
高良一輝 | 日本ハム | エナジック (2019) オセアン滋賀プラックス (2000) |
|
佐藤世那 (現) | オリックス | 横浜球友クラブ (2019-) (※) | |
園部聡 | オリックス | JX-ENEOS (2019) (※) Delfino 起業 (2020-) (※) |
|
仲尾次オスカル (現) | カープ | 新日鉄住金かずさマジック (2019-) (※) | |
比屋根渉 | ヤクルト | 大和高田クラブ (2019) (※) 琉球ブルーオーシャンズ (2020-) |
|
青山誠 | 巨人 | JX-ENEOS (2019) (※) (株)ワイズエンターテインメントファクトリー (2020) (※) 競輪学校試験に挑戦 (2020) (※) 日本大学硬式野球部コーチ (2021-) (※) |
|
篠原慎平 (現) | 巨人 | THINKフィットネス・GOLD’S GYMベースボールクラブ (※) (2019-) ゴールドジム女子硬式野球部 監督 (2020-) (※) |
|
須田幸太 (現) | DeNA | JFE東日本 (復帰) (2019-) (※) | |
網谷圭将 (現) | DeNA | ヤマハ (※) | |
野川拓斗 | DeNA | SUNホールディングス (2019) 川口ゴールデンドリームス (2020) (※) |
|
亀井塔生 (現) | DeNA | JPアセット証券 (2019-) (※) | |
吉田嵩 (現) | 中日 | JPアセット証券 (2019-) (※) | |
2019年オフ | 立田将太 (現) | 日本ハム | JR北海道クラブ (2020-) (※) |
南川忠亮 (現) | 西武 | JR四国 (復帰) (2020-) (※) | |
鶴田圭祐 (現) | 楽天 | ゴールデンリバース (2020-) (※) | |
船越涼太 (現) | カープ | 王子 (復帰) (2020-) (※) | |
2020年オフ | 堀内汰門 (現) | ソフトバンク | JFE西日本 (2021-) (※) |
藤井亮太 (現) | ヤクルト | シティライト岡山 (復帰) (2021-) (※) | |
田川賢吾 (現) | ヤクルト | 日立製作所 (2021-) (※) |
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今回のまとめ
今回はプロ野球退団後に社会人野球に所属する選手について話を進めてきました。
近年では退団後の進路として社会人野球を希望する選手が増加傾向にあります。
社会人野球では野球を継続するとともに会社員としての立場もあります。
将来に不安のある選手にとって野球を続けながら企業に属するメリットは大きいです。
ただ、NPB復帰を目指す選手にとっては非常に厳しいのが現実です。
過去に復帰したのは3人しかおらず、2010年を最後に出てきていません。
現役引退後に社業に専念できるのも社会人野球の特徴だと思います。
将来の安定を考えた時に社会人野球という選択肢は選手にとって大きなメリットです。
選手にとってメリットの大きい社会人野球。
現役続行を選択した選手がそれぞれの舞台で活躍することを願っています。
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