かーぷらぼ

広島で生まれ育った野球を担当するトレーナーのカープ研究(ラボ)ブログ

「先発完投型投手」はプロ野球界から消えるのか?年々減少する先発投手の完投数

この記事をシェアする

近年のプロ野球界では投手の分業制が進んで役割が細分化されています。
今回は減り続けている完投数にスポットを当てて現状について話を進めていきます。

f:id:carp-toyo:20191212141405p:plain

 

 

2011年以降のリーグ別完投数 

 

まずは2011年以降のリーグ別完投数の推移をグラフ化した。
見ての通り、2017年に少し変動があるが、基本的には右肩下がりの傾向。
これを見るだけでNPB全体で完投数が減って来ていることがわかる。

図1 2011年以降のリーグ別完投数
f:id:carp-toyo:20191115225024p:plain

次に各リーグのチーム別の完投数の推移をグラフ化した。
セ・リーグで見た場合、緩めだが右肩下がりの傾向にあるようだ。
2018年に巨人が顕著に突出しているが、2019年には一気に減少した。
ただ、2019年だけを見ればカープとDeNAは前年比で増加している。
各チームとも波が激しく、全体的に緩やかな下降といった印象。

図2 2011年以降のセ・リーグチーム別完投数
f:id:carp-toyo:20191115225004p:plain

パ・リーグで見た場合、セ・リーグに比べて右肩下がりが顕著。
特に2011年から2013年にかけて大幅に減少しているがよくわかる。
ただ、2019年だけを見ればカープとDeNAは前年比で増加している。
各チームとも波が激しく、全体的に緩やかな下降といった印象。
 ソフトバンク、日本ハム、ロッテの3球団に変化が起きた時期。
2019年なると6球団が収束する特徴が見られ平均化が起きている。

図3 2011年以降のパ・リーグチーム別完投数
f:id:carp-toyo:20191115224915p:plain

 

 

現役選手で完投数の多い投手は?

 

現役選手で完投数の多い順にピックアップしてグラフ化した。
現在も先発投手をオレンジ、先発を外れた投手をブルー、引退選手を点とした。
通算で見ると、長く先発で活躍している涌井秀章投手が群を抜いて多い。
次いで、金子弌大(千尋)投手、和田毅投手、岸孝之投手とベテランが続く。
和田投手はMLB在籍5年間があるので日本に残っていればもっと伸びただろう。
中堅クラスでは菅野智之投手と則本昂大投手がトップクラスに位置。
この2人に関しては故障の回復次第でまだ伸ばせる力はあると思われる。

図4 現役選手の通算完投数
f:id:carp-toyo:20191115224701p:plain

続いて上記の先発投手(オレンジ)の投手を年推移でグラフ化した。
先ほどトップに位置した涌井投手も2011年以降に一気に減少している。
ロッテ移籍前の2012~13年と西武でリリーフにまわった影響のため。
ただ、ロッテ移籍後も2015年に5完投したがそれ以外はほとんど無い。

菅野投手は入団以来、順調に数を伸ばしてきたが、2019年には失速。
12球団で唯一完投タイプの投手だったが、長引く故障により低迷した。
腰部痛の状況にもよるが、再び"先発完投型"として復帰を期待したい

また、山口俊投手も2018年は12球団2位と奮闘したが2019年は0に。
成績自体は過去最高だったが、采配の関係もあったのかも知れない。
2018年までは高橋由伸監督だったが、2019年に原辰徳監督に変わった。

2019年に完投数を一気に伸ばしてきたのが大瀬良大地投手。
個人の成績は良くなかったが、両リーグトップの6完投と奮闘した。
ただ、前半戦に記録した完投が多く、大事な後半戦の時期には失速。
2020年は年間を通して完投数を伸ばしていくことを期待したい。

図5 現役選手の年間完投数の推移
f:id:carp-toyo:20191115224639p:plain

 

完投数と言えば「沢村賞」 

 

完投数が関与するタイトルと言えば沢村賞である。
沢村賞の受賞には以下の7つの基準が設けられている。 

  • 登板試合数 25試合以上
  • 完投試合数 10試合以上
  • 勝利数   15勝以上
  • 勝率    6割以上
  • 投球回数  200回以上
  • 防御率   2.50以下

ただし、受賞において全ての基準を満たす必要はない。
このうちいくつ達成したか、どれをクリアしたかで判断される。
ある意味、"アバウト"とも言える判断だが、ルール上仕方ない。

改めて、完投数の基準を見ると、10完投とかなりハードルが高い。
近代の野球でこの数字を達成するのは至難の業とも言える。
以下の2011年以降の沢村賞投手の完投数を見るとそれが良くわかる。
10完投したのは、2011年の田中将大投手と2018年の菅野投手の2人。
それ以外のほとんどが6完投以下で10完投がいかに難しいかわかる
特に、「該当者なし」の2019年には10完投した投手は0となった。

図6 沢村賞受賞投手の完投数
f:id:carp-toyo:20191115224506p:plain

ちなみに、2011年以降に10完投を達成した投手は以下の通りである。
9年間で達成したのが4人しかいないをの見るとかなりハードルが高い。

  • 2011年 田中将大(14)・ダルビッシュ有(10)
  • 2013年 金子千尋(10)
  • 2018年 菅野智之(10)

 

2019年は19年ぶりに沢村賞の該当者なし

 

現在の沢村賞選考委員は以下の5人となっている。
基本的に通算200勝以上の「名球会」投手から人選されている。

沢村賞選考委員

  • 平松政次、堀内恒夫、村田兆治、北別府学、山田久志

該当者なしについて堀内恒夫氏はその件について以下のように述べている。

野球のシステムが変わってきて、非常に完投しにくくなっている。ですからクオリティー・スタート(QS)という項目を参考に入れている。でもこれを(選考基準に)入れるほどレベルを下げていって、完投なしでもいいとなると、沢村さんの名前に傷をつけてしまうような気がする。 ~堀内恒夫氏 https://www.nikkansports.com/baseball/news/201910210000614.html

果たして本当にレベルが下がったと言えるのだろうか?
個人的には野球全体のレベルが上がって完投が難しくなったと考えている。
少なくともこの10年で打者のレベルは格段に向上している。
それに対応するためには、それなり球速と変化球の種類が必要となった。
昭和のように「2球種だけで勝負」といった投手では通用しなくなった。
どう見るかは様々であるが、少し疑問の残るコメントだったように思う。

また、平松政次氏も以下のようにコメントしている。

この2人(山口俊投手・有原航平投手)の成績を見ると甲乙つけがたい。どちらかを落とせない。しかし、ダブルで2人が受賞するには成績が物足りない。そういう選考の苦労があった。 ~平松政次氏 https://www.nikkansports.com/baseball/news/201910210000614.html

いずれにしても、選考基準を達成する投手が少なくなったのは事実。 
今の時代の野球に沿った基準へと変化していくことも必要と思われる。
また、選考委員が全て60歳以上と少し年齢層の編成も見直しても良い。
例えば、山本昌氏や佐々木主浩氏などの年代も加えるべきかと思われる。
根本的に言えば、名球会入りした投手である必要も無いのかも知れない。

とはいえ、完投がほとんど無い投手が沢村賞受賞というのは味気無い。
完投数を撤廃という形ではなく、7に引き下げるなどの対応も検討される。

 

完投数に対する疑問は声は「海外」からも

 

元ソフトバンクのCJ.二コースキー氏はTwitterで以下のようにコメントしている。
Tweetの最後は「10完投?!?!」と完投数の基準に驚いた反応を見せている。

25試合、15勝、10完投、勝率.600、200イニング、防御率2.50、150奪三振がいずれの投手でも標準的な基準が満たされなかったため、今年のNPBでは沢村賞を誰も受賞しませんでした。これらすべての条件を満たす最後のMLB投手は、1999年のランディ・ジョンソンです。10完投?!?! ~CJ.二コースキー

 

MLB最後の「10完投」投手

 

MLBで最後に10完投を達成したのは2011年のジェームス・シールズ投手。
ただ、2011年に11完投4完封したが、それ以外の年は3完投が最高であった。
かつての9年連続二桁投手も、2019年は所属球団が無くシーズンを終えた。

  • 通算 407試合 145勝139敗 4.01

余談だが、大谷翔平選手1年目の9号本塁打はシールズ投手から放った。 


Statcast: Ohtani's 446-ft. homer | 07/26/2018 | MLB.com

 

サイヤング賞を受賞した投手の完投数

 

MLBでも最高投手に与えられるサイヤング賞がある。
そこで、2011年以降のサイヤング賞の完投数を振り返る。
調べてみると最多でも2014年のクレイトン・カーショー投手の6完投。
ほとんどが5完投以下とMLBでの完投に対する評価はあまり無くなった。

  • 2011年 クレイトン・カーショー(5)、ジャスティン・バーランダー(4)
  • 2012年 R・A・ディッキー(5)、デビッド・プライス(2)
  • 2013年 クレイトン・カーショー(3)、マックス・シャーザー(0)
  • 2014年 クレイトン・カーショー()、コーリー・クルーバー(3)
  • 2015年 ジェイク・アリエタ(4)、ダラス・カイケル(3)
  • 2016年 マックス・シャーザー(1)、リック・ポーセロ(3)
  • 2017年 マックス・シャーザー(2)、コーリー・クルーバー(5)
  • 2018年 ブレイク・スネル(0)、ジェイコブ・デグロム(1)
  • 2019年 ジャスティン・バーランダー(2)、ジェイコブ・デグロム(0)

 

 

カープで最後の「10完投」は誰?


カープで最後に10完投をした投手は誰だろう。
かなりデータをさかのぼってみたが、2005年の黒田博樹投手が最後。
その後も黒田投手の7完投がMAXで、前田健太投手でも5完投がMAX。
16年も前までさかのぼらないといけないほど近年では10完投は難しい。
黒田投手も2011年に13完投したのを加えてもプロ通算2回しかない。

図7 カープ先発のチーム最高完投数
f:id:carp-toyo:20191115224407p:plain

さらにさかぼって調べてみたが、元エースの2人が複数回達成していた。

北別府学投手

  • 1979年 12完投
  • 1981年 13完投
  • 1982年 19完投
  • 1983年 12完投
  • 1986年 17完投
  • 1988年 13完投

佐々岡真司投手

  • 1991年 13完投
  • 1999年 13完投

 

ここまでわかったこと

 

  • 完投数は年々減少する傾向にある
  • セ・リーグよりもパ・リーグの減少傾向が強い
  • 現役投手の中で完投数最多は涌井秀章投手
  • 涌井秀章投手も2011年から完投数が激減
  • 沢村賞の基準である10完投は2019年は0人
  • 2011年以降の沢村賞投手で10完投は2人のみ
  • 10完投という沢村賞の基準の再検討も必要
  • カープで最後の10完投した投手は黒田博樹投手
  • 北別府学投手が6度、佐々岡真司投手が2度記録

▼先発投手の関連記事はこちら

www.carp-damashii.work

 

今回のまとめ

 

今回は先発投手の完投を中心に話を進めてきた。
近年は投手の分業制が進み、完投する投手が減少している。
障害予防のため100球を基準に各チームで球数制限も行っている。

昭和のような「先発は試合の最後まで」という価値観も変わってきた。
むしろ、故障を避けるため完投したくない投手の方が多いように思う。
現在では完投を常に口にするのは菅野投手くらいかも知れない。

完投するのが難しくなった今、沢村賞の基準も検討する時期にある。
現実的に10完投もする投手はほぼおらず、采配自体も変わっている。
変わりゆく野球界の中で賞の基準も変化していくべきかも知れない。

ただ、先発完投型の投手はファンとしてもワクワクするのも事実。
100球が近づくたびに「そろそろ交代」と思ってしまうのも正直残念。
ベンチサイドも100球ありきで次の準備し始めるのもなんだか寂しい。
チームに1人くらいは最後まで投げ切れる強い投手がいても良い。

時代とともに野球のスタイルも変化し価値観も変わっていく。
しかし、カープ先発陣に「先発完投」投手が現れるのを期待したい。 

 

 


最後までお読み頂きありがとうございました。 

記事:「先発完投型投手」はプロ野球界から消えるのか?年々減少する先発投手の完投数

▼CARP2019熱き闘いの記録 ~頂きをめざして~ [Blu-ray] 

☞ 2019年もたくさん出版された「カープ本」のまとめ

||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

※ 当ブログの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
※ 盗用を発見した場合、サーバー会社・ドメイン会社・google等に連絡し法的に対応致します。
※ 当ブログの写真は広島東洋カープに電話で直接問い合わせ、許可の範囲で掲載しています。

Copyright© かーぷらぼ 2019 All Rights Reserved.