【 藤浪晋太郎投手も挑戦 】ドライブラインベースボール(Driveline Baseball )の”球速アップ”や”ケガのリスク”について検証

簡単な自己紹介

3番センター3番センター
16年目になる医療系国家資格取得のトレーナーです
現在は「医学」に加えて「法律」も勉強しています。
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近年はSNSや動画サービスにより海外のトレーニング方法が簡単に手に入るようになりました。
今回は2019年オフに話題になった「ドライブラインベースボール」について話を進めていきます。

 

 

プロ野球界で話題の「ドライブラインベースボール」

 

2018年から2019年に野球界で「ドライブラインベースボール」が話題となりました。
2019年のオフには複数の球団がコーチ招聘または選手派遣を行って積極的に取り入れました。

  • ソフトバンク 2019年秋季キャンプ招聘
  • 日本ハム   2019年秋季キャンプ招聘
  • ロッテ    2019年オフに派遣
  • 西武     2019年オフに派遣
  • DeNA    2019年オフに派遣
  • 中日     2019年オフに国内派遣
  • 阪神     2019年オフに国内派遣

 

①「ドライブラインベースボール」を取り入れる選手たち

 

各球団でドライブラインベースボールに参加している主な選手は以下の通りです。
ここではチーム単位でコーチを招聘したソフトバンクと日本ハムは除きます。

◎ 2018年オフ

  • 日本ハム / 金子弌大(千尋)
  • ロッテ / 西野勇士
  • 中日 / 佐藤優・木下雄介

◎ 2019年オフ

  • ロッテ / 成田翔・小島和哉・中村稔弥・種市篤暉・二木康太
  • 西武 / 齊藤大将・中塚駿太・田村伊知郎・國場翼・藤田航生・東野葵
  • DeNA / 今永昇太・濱口遥大・京山将弥・中川虎大・進藤拓也
  • 中日 / 藤嶋健人・又吉克樹・笠原祥太郎・大蔵彰人・山本拓実
  • 阪神 / 藤浪晋太郎

 

2018年オフに取り入れた西野勇士投手は以下のように答えています。

「行ってよかったですよ。真っすぐに力が戻ってきた。」

~ 西野勇士投手 【ロッテ】井口監督、若手5投手「ドライブラインベースボール」に送り込む

 

 

② 阪神の藤浪晋太郎投手らが「沖縄でのセミナー」に参加

 

2019年12月にはBCプロジェクト主催で「沖縄セミナー」も開催されました。
4泊5日の日程で、報道では参加費については1人50万円とのこと。

5日間で座学・フィジカルチェック・動作解析・球種解析・リカバリーなどを実施。
多くの選手が初めて聞く内容やトレーニングが多く参加選手たちに好評だったようです。

当セミナーに参加するにあたり藤浪晋太郎投手は以下のように答えていました。

「動作解析してもらえるので、自分の動作の弱点を知って、何が出来てないからコントロールが出来ないのか、というところをしっかり知りたいなと。」

~ 藤浪晋太郎投手 藤浪がドライブライントレ、きっかけはダルビッシュ : 日刊スポーツ

また、藤嶋健人投手は2日目までの指導を受け以下のようにも答えています。

「自分がやったことがないアップの仕方だったり、投球に近いエクササイズが多くて非常にやりやすかった。」

~ 藤嶋健人投手 中日藤嶋「ワクワクしながら」藤浪との合同合宿刺激 : 日刊スポーツ

 

 

「ドライブランベースボール」の概要

 

「ドライブラインベースボール」はアメリカのワシントン州にある施設。
プロとアマを合わせて500名以上の野球選手がここでトレーニングしています。

[ Driveline Baseball ]

19612 70th Avenue South、Unit 2-4 Kent、WA 98032
(425)523-4030
Mon-Fri, 9:30 AM – 5 PM

 

同施設からMLBへ多くのスタッフを輩出しています。

  • James Buffi (ドジャース)
  • Micah Daley-Harris (ダイヤモンドバックス)
  • Matt Daniels (ジャイアンツ)
  • Ryan Faer (インディアンス) 
  • Jack McGeary (ジャイアンツ)
  • Cam Castro (ブリュワーズ)
  • Cory Popham (ブルージェイズ)
  • Demetre Kokoris (ブルージェイズ)
  • Joel McKeithan (フィリーズ)
  • Tanner Reklaitis (エンジェルス)
  • Casey Jacobson (カブス)
  • Daniel Moskos (ヤンキース)
  • Sam Briend (ヤンキース)
  • Michael Schwartze (ジャイアンツ)
  • Griffin Gowdey (レンジャース)
  • Cody Aden (レンジャース)
  • Rachel Balkovec (ヤンキース)
  • Bryan Leslie (ブリュワーズ)
  • Sumair Shah (ツインズ)
  • James Barber (ツインズ)
  • Zack Jones (フィリーズ)

 

① 創設者のカイル・ボディー(Kyle Boddy)

 

ドライブラインベースボールの開発者はカイル・ボディー(Kyle Boddy)氏

  • アメリカ人
  • 1983年生まれ
  • オハイオ州パルマ出身
  • ヴォールドウィンウォレス大学中退
  • 2012年にDriveline Baseballを設立
  • 2019年にシンシナティ・レッズの投手コーディネーターを担当

カイル・ボディー氏も高校時代に野球でケガをし、練習方法に興味を持ったそうです。
その後、独学で勉強し、研究にも携わりながら、Driveline Baseballを設立しました。

 

② “火付け役”となったトレバー・バウワー投手

 

ドライブラインベースボールで代表的な選手はトレバー・バウワー(Trevor Andrew Bauer)投手

  • アリゾナ・ダイヤモンドバックス (2012)
  • クリーブランド・インディアンス (2013-2019)
  • シンシナティ・レッズ(2019-2020)

2014年オフからドライブラインに通ってトレーニングに取り込むことで能力が開花。
2015年からは5年連続で二桁勝利を挙げ、MLBでもトップクラスの投手として活躍しています。

元々、科学などに興味を持ち、研究熱心だったトレバー・バウワー投手。
カイル・ボディー氏と出会うことで、科学的な理論が結果へと結びつきました。

  • 2015年 11勝12敗 防御率 4.55
  • 2016年 12勝  8敗 防御率 4.26
  • 2017年 17勝  9敗 防御率 4.19
  • 2018年 12勝  6敗 防御率 2.21
  • 2019年 11勝13敗 防御率 4.48


引用 : Momentumb公式サイト (https://youtu.be/oIiWg1bY43s)

 

その他、ドライブラインベースボールを利用した主なMLB選手は以下の通りです。

  • Joseph Ronald Beimel (ジョー・ベイメル)
  • Daniel Steven Straily (ダン・ストレイリー)
  • Matthew Robert Boyd(マシュー・ボイド)
  • Caleb Kent Cotham (カレブ・コザム)
  • Christopher Frank Capuano (クリス・カプアーノ)
  • Timothy LeRoy Lincecum (ティム・リンスカム)

また、マイナーリーグの選手は以下の通りです。

  • Cody James Buckel (コーディ・バッケル)
  • Craig Andrew Breslow (クレイグ・ブレスロー)
  • Corey Dean Copping (コーリー・コッピング)
  • David Reid-Foley (デビッドリード・フォーリー)
  • Casey McGhee Weathers (ケーシー・ウィザーズ)

コザム投手とウィザーズ投手は引退して現在はシンシナティ・レッズのコーチに。
ドライブラインに通った選手たちがカイル・ボディー氏と共にレッズ投手陣の強化を図ります

 

③ 2019年オフにはカーショー投手やジャンセン投手も参加

 

2019年オフにはクレイトン・カーショー(Clayton Kershaw)投手もドライブラインに訪問。
カーショー投手と言えば3度のサイヤング賞を獲得し、通算169勝のMLBを代表する投手。

同時にケンリー・ジャンセン(Kenley Jansen)投手アレックス・ウッド(Alex Wood)投手も訪問。
これらMLBを代表するベテラン3投手もドライブラインが行うプログラムに興味を持っています

 

特徴的な”重いボール”を用いたトレーニング方法

 

ドライブラインベースボールのプログラムで中核を占めるのが”重いボール”を使用したもの。
砂の入った100g、150g、225g、450g、1000g、2000gのボールを壁に向かって投げます。
試合で使う公式球がおおよそ142gなので、かなりの重量のボールなのがわかると思います。

これまで投手には敬遠されてきた重いボールでのトレーニング。
ケガのリスクを考えてのものでしたが、逆に良いフォームが作れると採用されています。


引用 : https://youtu.be/V5ACgxa-tXk

 

2018年オフに金子弌大投手が”重いボール”を投げる様子もTwitterに投稿されました。
投稿したのはサンフランシスコ・ジャイアンツのMatt Daniels投手分析コーディネーター。
Matt Daniels氏は元ドライブラインのメンバーで2019年にジャイアンツに採用されています。

引用 :  https://twitter.com/OneGun45/status/1062766644760461312

 

ちなみに使用しているボールは日本でもamazonなどで購入することができます

また、縫い目のある投球練習時に使用する重さの異なるボールも販売されています。

 

① 懸念される「肩やヒジのケガ」

 

重さの違うボールを用いたトレーニングでは「球速向上」が研究で報告されています。
研究により用いた重さは違うものの、多くのケースで3キロ前後の向上がみられました。

ただし、同時にケガのリスクも報告され、特に“ヒジのケガ”が懸念されています。
トミージョン手術などでよく耳にする靭帯という組織が主な対象と考えられています。

ドライブラインで用いる重さは過去の研究よりも重いボールになります。
特に2000gといった重さのボールを扱うとなると、よりケガのリスクは高くなります。
反対に、軽いボールを投げることが逆にケガに結びつく可能性も考えられます。

一般的に球速が向上するほど、ヒジへの負担が増加してきます。
単純に重いボールが負担となったと考えがちですが、球速向上の影響も無視できません。

ここで考えたいのは、ヒジのケガは「何が原因で起こったのか」です。
「重いボールを用いたことが原因」なのか「球速が上がったことが原因」なのか。
あるいはその両方があった影響なのか、全く別の要因によるものなのかなど。

選手には個体差があり、柔軟性、筋力、フォーム、障害歴、疲労度、年齢などたくさん
研究ではこれら条件を全て完全にそろえることは不可能で、正解を出すことは難しいです。

つまり、ケガをした選手には基礎的な問題があった可能性もあります。
逆に、ケガをしなかった選手はそういった問題はなかったのかも知れません。

これは単純に“数字(データ)”として確認できないものも含まれてきます。
現在の動作解析の手法では分析できる動きは限定され、最も大事な分析ができません。
個人的にはこの部分が投球において最も大事な要素と考えています。

筋力や可動域の検査においても決められた方向への簡便なものとなっています。
どうしても比較のため統一した手法が必要となり、”研究”では仕方ない面でもあります。

また、対象とする選手数も研究としてはかなり少ない人数であることも事実です。
もっと多くの人数で研究が出来れば良いですが、それも現実的には難しいのが現状です。

専門的な話が続くのでこの辺りにしますが、話せばもっとたくさんの項目がでてきます。
それだけ条件設定は難しく、研究結果を安易に選手に当てはめられるものでもありません。

そもそも軽いボールが影響したかも知れませんし、全く関係ないかも知れません。
どうしても研究には”限界”があり、あくまでも参考としてみていく必要があります。

 

② 実施する前には「専門家のチェックが大事」

 

最終的には選手個々で様々な検査を行い、個別で対応していく必要があります。
同じトレーニングをしてもかなり危険な選手も、そうでない選手も存在します。

そういった面を配慮した場合、選手だけで取り入れた場合には”リスク”を伴います。
最悪の場合、靭帯断裂でトミージョン手術という結果になる可能性もあります。

ドライブラインでも事前に数日かけて様々なフィジカル検査が行われています。
医学的知識を持ったスタッフが細心の注意を払いながら、状況を見極めていきます。

それぞれの長所、短所を把握した上で、個別での対応を行う必要があります。
これはドライブラインに限ったことではなく、トレーニングでも治療でも同じです。

最近はSNSやYouTubeなどで簡単にトレーニング動画を学ぶ機会が増えました。
同時に安易に取り入れたがために“選手寿命を縮めた”選手も多くいるかも知れません。

プロ野球選手が行っていると興味がわくのは事実だし、上手くなりそうな気がします。
しかし、彼らとはフィジカルもフォームも経験も全く異なる点に注意が必要です。

新たなトレーニングを採用する際は、必ず専門家に相談することをおすすめします。
専門家にしっかりジャッジしてもらって「今の自分に必要なもの」を選択しましょう。

 

③ ケガの予防にも積極的に取り組むKyle Boddy氏

 

Kyle Boddy氏もケガのリスクについては十分に理解しています。
事実、ケガの予防に多くの投資をしているとコメントもしています。

同時に理学療法士を雇用し、プログラム前に入念な検査を実施します。
これら検査で必要条件をクリアしない選手はプログラムを受けられません。

ただし、同時に活躍するためには球速の重要性も説いています。
ドラフトにおいても「スカウトたちの注目のひとつは球速」とも述べています。
つまり、球速が選手として“魅力”であることも事実として受け止めています。

 

2018年オフに取り組んだ選手たちの”球速変化”

 

2018年オフにドライブラインを取り入れた投手の球速変化をみていきます。
ここではストレートの「平均球速」で2018年からの変化を比較していきます。

  • 西野勇士 142.8キロ ⇨ 144.3キロ
  • 金子弌大 141.2キロ ⇨ 142.5キロ
  • 佐藤優  145.4キロ ⇨ 144.1キロ
  • 木下雄介 146.6キロ ⇨ 147.8キロ

上記のように球速が向上した投手もいれば向上しなかった投手もいます。
西野勇士投手に関しては「効果があった」と言えるのかも知れません。

ただ、どの投手もオフには様々なことに取り組んでいます。
他の要素が影響したことも考えられますし、その逆も考えられます。

プログラムを取り入れれば必ずしも結果に繋がる訳では無く
当然のことですが「どう使いこなせるか」も重要になってきます。

 

① 成績が”大きく低下”した佐藤優投手

 

佐藤優投手は2019年の春季キャンプ中に以下のように答えています。

「ボールがいかないんです。全くダメ。去年の1軍昇格時が10だとしたら、今は1か2、ちょっとマズいなって思っています。」

~ 佐藤優投手 【中日好き】佐藤優、より強く、より速く : J-sports

 

2018年は飛躍の1年でしたが、2019年になって大きく成績を落としています。

  • 2018年 42試合 1勝1敗 2.08
  • 2019年   7試合 1勝0敗 6.58

これがドライブラインの影響かどうかは不明です。
初めて1軍に定着した2018年の疲労が抜けていなかったのかも知れません。

 

② 復活できなかった「ティム・リンスカム投手」

 

次に元サイヤング賞投手のティム・リンスカム(Timothy Leroy Lincecum)投手。
7年連続で二桁勝利を挙げた投手も2015年からは股関節の手術などもあり成績が低迷。
2016年は所属していたロサンゼルス・エンゼルスから戦力外通告を受けました。

復活をかけて2017年オフにはドライブラインを訪れてプログラムに取り組みました。
しかし、2018年にテキサス・レンジャースに所属するも、6月5日に自由契約に。

その後のリンスカム投手はFAの状態のまま引退宣言もなく不明のまま。
当然ながらドライブラインを取り入れれば良いという万能なものではないようです。

ドライブライン利用時に活躍時のイメージと異なる“短髪”“筋肉質な姿”も見せました。
リンスカム投手も復活を目指して様々なことに取り組んでいる様子が伝わってきました。

 

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③ “オタク気質”なトレバー・バウワー投手

 

改めて、トレバー・バウワー投手について考えてみます。
バウワー投手の成功の裏にはいくつか理由があったように思います。
ひとつは物理学に詳しいこと、もうひとつはウエイトボールに慣れていること

バウワー投手は学生の頃から物理学にとても興味があったそうです。
マニアックと呼ばれるほど精通し、専門家と同じレベルで会話が出来るとのこと。

また、小さな頃からウエイトボールを使ってトレーニングもしていました。
ドライブラインに通う前からウエイトボールを扱うことに慣れています。

それら条件もあり、トレーニングを上手く活用し、ケガも発生しない。
同じトレーニングをしても他の選手よりも効果が出やすいのかも知れません。

 

④ どんなものも「課題の抽出」が大事

 

どんなものであれ「課題の抽出」がいかにできるかが大事になります。
また、本人がそれをどれだけ理解しているかも成功には重要となってきます。

一方的に提供されたプログラムをこなすだけでは結果に繋がりにくいです。
同時に流行ってるものを次々と取り入れるだけでも結果に繋がりにくいです。

まずは何ができて何ができないかを正確に理解する。
すでにできていることに対してさらに取り組んでも大きく伸びてきません。
反対に、問題点と取り組みがズレていれば一向に問題が改善できません。

シーズンオフになると毎年のように新たなトレーニングを目にします。
新たな取り組みも大事ですが、“自分に必要なものか”を考える必要があります。

 

 

「ドライブラインベースボール」のまとめ

 

今回は話題となったドライブラインベースボールについて話を進めました。
近年の分析を重視する野球のトレンドにマッチして注目を浴びています。

選手の課題をデータで表して、的確なアプローチを提供する。
様々な機器が開発され、問題点が可視化されることでそれも可能となりました。

反面、アプローチが限定されることで”遊び”の部分も無くなる気もします。
また新たなアプローチは蓄積したデータも少なくまだまだ未知数な所があります。

とはいえ、新しいアプローチを頭ごなしに否定するのは良くないです。
どんなものであれ「それをどう扱うか」でプラスにもマイナスにもなります。

それを判断するには専門的な知識と経験が必要とも言えます。
そいった積み重ねをしていくことで上手く活用でき現場に生きてきます。

研究もこれから積み上げられて効果が検証されるでしょう。
さらに改良も進み、より精度の高いアプローチに変わる可能性はあります。

今後、ドライブラインベースボールがどう評価されていくのか。
同時に選手たちがどんな変化を見せるのか楽しみにしたいと思います。

 

 

Driveline PlyoCareボール


 

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